これは凄い!【ある奴隷少女に起こった出来事】を読んで、差別の本質を考えよう!

本や読書。

 すごい本に出逢ってしまいました~。
 皆さんは、「奴隷制度」というとどのような事を思い浮かべるでしょうか?
 ワタクシは、「風と共に去りぬ」とかそういった作品で白人に仕えている黒人だったり、「歴史的な建造物をつくるのに奴隷を使った」というような表現で聞いていました。

 深く考えることもなく…なんとな~く読んでいましたが、今回の【ある奴隷少女に起こった出来事】は、奴隷の視点に立って読み、今まで気にしていなかった「使う側と使われる側の関係」について、非常に考えさせられました。

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本との出逢い…。

 この「ある奴隷少女に起こった出来事」は、新潮文庫の100冊2022にラインナップされていた本です。以前からラインナップされていて、気にはなっていたのですが、他に目移りしてしまって読んでいませんでした。
 今年こそは…と思って読んでみたわけです。

キュンタくんのおススメ!

本の内容は?

 この本は、ノンフィクションです。ハリエット・アン・ジェイコブズという黒人の少女に実際に起きたことを自伝という形で書かれたものです。
 この本が出版されたのは1861年ですが、南北戦争やらいろいろあったからなのか「著者不詳のフィクション」ということで忘れ去られていました。

 ところが、アメリカの歴史学者が、この本を事実に非常に忠実な自伝であると証明したのが、1987年。当時、すでに126年の月日が流れていたのでした。そして、現代ではアメリカの古典名作ベストセラーとして蘇ったのです。

 話の内容は、ハリエット・アン・ジェイコブズが生まれた1813年から、奴隷としての生活の様子をペンネームのリンダ・ブレントとして書かれたものです。
 22歳になる1835年までが第1部。7年間の逃亡生活が第2部。北部に逃げて自由になるまでが3部という構成になっています。

 全体を通して、暗く切なく悲しいという感じではなく、明るい感じで話は流れていきます。ただ、理不尽な処遇や絶望、苦しみには目を覆うばかり、こんなことが実際にあるのか、できるのかと、それこそフィクションの中の話ではないのか…フィクションの中のことであって欲しいと願うばかり、今からたった161年前にこんなことがあったんだと思うと恐ろしくなりますね。

翻訳の堀越ゆきさんとは?

 さて、こんなにも考えさせられる本を翻訳した堀越ゆきさん…他にどんな本を…?ときになったのですが…。
 役者あとがきによると…堀越さんは、翻訳者でも文学者でも歴史学者でもない一般の方だそうです…。え~っ、そんな事あるの?

 新潮社のホームページによると…東京外国語大学を卒業され、ジョージ・ワシントン大学大学院を卒業。2017年現在は、世界最大手のコンサルティング会社に勤務。とあります。

 あとがきにも、出張で飛び乗った新幹線で携帯電話で読んだと書いてあります。たぶん…英語で読んだんでしょうね~。そこで、こんなすごい本があるのに、日本で出版されてないなんて日本の少女たちどうなっちゃうの? それならば、あたしが!という感じなんでしょうか翻訳をされたわけです。

 現代少女のための新しい古典文学だそうです。

 ちなみに、堀越さんの翻訳は原書に忠実というわけではなく、重複していたり、直接は関係ないような部分はカットしているそうです。だからテンポよく読めるんですね~っと、納得しました。
 非常にありがたかったかな~っと思っています。

 日本では、2001年に明石書店から「ハリエット・ジェイコブズ自伝」小林憲二:編訳も出版されているそうで、こちらは研究書として注釈や解説も豊富ということなので、全体を知りたい、読みたいという方は、こちらも読んでみると良いかもしれませんね~。

登場人物のその後も書いてある

 親切な堀越さん、この本に登場した人のその後についても、あとがきにわかる限り書いてくれています。

 高校生に読んで欲しい50冊 2022

毎年でてるんですよね~これ。

 堀越さんが、現代少女のための新しい古典文学と言ったからなのかどうかはわかりませんが、高校生に読んで欲しい50冊でも紹介されていました。

 まぁ、少女に限らず少年にも読んで欲しいと思いますが、紹介の分類が「泣」になってますが…「考」じゃないかなぁ~っと思いますけどね。

 私は、どちらかと言うと男の子に読んで欲しいなぁ~っと思いますがね~。なぜなら、リンダの実質的な所有者は男性だからです。

切り開くのはかなり大変でしたよ。
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奴隷制度はなくなったのか…?

 現在、日本に住んでいれば奴隷制度とは歴史の教科書に載っている話だと思ってしまうかもしれません。ところが、奴隷制度というのは歴史上のものではなく、現在も世界各地に残り続けている制度なのです。

 我々が思っている奴隷制度とは、人間としての権利や自由がなく、所有者に支配され強制労働をさせられたり、また商品として売られたり買われたりすることだと思っています。たしかに、以前はそういう感じだったかもしれません。

 現代では奴隷制が法律で定められていることはないのですが、脅威や暴力、強要、権力の乱用といった圧力に対し、拒絶も離脱もできないような状態のことをいうそうです。

 具体的には、「強制労働」「強制結婚」。他には、地域ならではの慣行や、人身取引などがあげられるそうです。奴隷という言葉を使わずに、実質的な隷属状態にされているということなのでしょう。

現在の日本にも奴隷が?

 2016年の記事でしたが、世界で4600万人が現代の奴隷になっていると衝撃のニュースが流れました。調べたのは、オーストラリアの人権団体ですが、なんと日本は25位、人口比率では41位だったのです。

 ちょっと驚きの数字ですよね~。ただ、アメリカの定義では、強制労働には、児童労働、セクハラ、パワハラ、低賃金、長時間労働、労働法規に違反している…まぁ、ブラック企業とかというところも含まれるそうなので、そう考えると…ありえない数字じゃないなとおもいますね…。

対策は?

 世界各地で問題視されていて、SDGsの目標にも関連していることから、国際的な取り組みも行われ始めているそうです。
 根本的には貧困問題があるそうで、日々の生活費を得るために借金をしてしまい、そこから隷属状態になってしまったり、ということが考えられているそうです。
 社会全体での見直しが必要なのかもしれませんね。

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人間の矛盾がここにある

 さて、ここからはワタクシが読んで思った事です。

神様は関係ない?

 この本の中でも色々な黒人と白人が出てきますが、白人の全員が全員、暴力をふるったりするわけではありません。親切な方もいるでしょう。
 ただ、制度としての奴隷制があって、法律できまっているとなれば、わざわざ奴隷制をなくする方がいいと思う動機がないですよね。楽なんだから、そういう意味では消極的な奴隷制推進者と言えますね。

 また、奴隷をたくさん働かせ搾取している白人もいます。気に入らなければ暴力をふるう事もあります、とうぜん奴隷は逃げることはできません。殺されても文句が言えないそうですから。こういった場合は、積極的な奴隷制推進者と言えます。奴隷制を利用して自分は楽できるわけですから。

 ただ、どちらも日曜日には教会に行って、お祈りをするのです。これは、アメリカ北部の奴隷制反対の人たちも日曜日には教会に行って同じ神様にお祈りをするのです。

 また、奴隷となっている黒人も神様にお祈りをするのです。たぶん、同じ神様だと思うのですが…。

 となると、神様がどこにいらっしゃるのかは関係ないのです。

人間の残酷さ

 やはり、人それぞれの心にある残酷さがあるのでしょう。法律できまってる、殴ってもいいとい保証があれば、人は殴ったりしてしまうのでしょう。

 いやいや、私は殴りませんと言い切れる人はいるでしょうか。だって殴ってもいいんです。自分が権力者なんです。自分の買ったぬいぐるみをボカスカ殴るようなものなんです。どうですか?それでもそんなことしないと言い切れるでしょうか…。
 手が痛くなりますか?モノで殴ってもいいんですって、ムチを使うらしいですよ。

 ワタクシは、そんな権利に遭遇したら、自分が変わってしまうのではないかと思いますし、変わってしまったらどうしようと怖いです。

 世の中には、人間だけでなく犬や猫を虐待してしまう人もいます。それも同じ心理なのではないでしょうか。また、直接手は出さなくても言葉の暴力や態度などで虐待することもできますよね。そういった事も奴隷制に繋がっているのではないでしょうか。

 人を征服したいという気持ちが芽生えたり、怒りに任せて殴ってしまったりする。

 そういう感情がある限り、広い意味での奴隷制はなくならないような気がしますね~。

 また、隷属している方がいいという方もいるかもしれませんね。自分で考えて、自分で生きていくってすごく大変なことですからね。色々なサポートができるように、世の中が少しでも良くなっていけばいいですね~。

しおりに使った永谷園のカード
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まとめ。

 なんだか、疲れているのか考えがまとまらないですね。ふわふわしてますね。
 ま、とにかく、この本にはとても考えさせられました。アメリカの古典名作ベストセラーですから、ぜひ読んでみることをお勧めします。

 きっとふか~く考えたくなること間違いなしです。

 タイトル:ある奴隷少女に起こった出来事
 著  者:ハリエット・アン・ジェイコブズ
 翻  訳:堀越ゆき
 出版社 :新潮文庫 解説までで343ページ
 お値段 :630円(税別)

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